魔法科高校の優等生 13話ネタバレ注意!栞の祈りと深雪の決意の表情にも注目!

この記事では魔法科高校の優等生 第13話「ゆずれない想い」のネタバレや感想、見どころについて解説していきます。

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今回でこのアニメ『魔法科高校の優等生』は最終話を迎えます。物語は九校戦最終競技種目である《ミラージ・バット》本戦の決勝戦です。

上級生たちを下した一年生である司波深雪と一色愛梨が激突する試合から始まります。試合は深雪も愛梨も互いに背負っている責任の重圧の中、持てる力を発揮した力強い試合となりました。

そして、その後は互いを認め合い良きライバル関係を築きます。

またその後の展開はシリアス場面と笑える場面が同時進行する”優等生”では珍しい流れとなります。

シリアスは達也が《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》を壊滅させるシーン。笑える場面は女湯でのドタバタです。

女湯では前回の第6話「九校戦、開幕です」での懇親会後の第一高校一年女子チームだけが入浴しましたが、今回は第三高校の三人美娘である愛梨、栞、沓子も混じってのドタバタです。

その後は九校戦最終夜に行われた後夜祭のシーンとなります。

ここでは真由美による第一高校の一科生、二科生の制服の違いに関する秘話が明かされます。また《モノリス・コード》新人戦で一条将輝を破った達也の真の実力が十師族にバレてしまい、そんな達也が逃げ隠れしづらくなることを暗示させるシーン、そして最後には夜の中庭での達也と深雪とのダンスシーンもあります。

そしてエンディングが流れ終わったCパート。時は過ぎて2096年1月9日となります。

深雪たちがいる場所へ金髪の見慣れぬ女子生徒が近寄り声を掛けました。ですが顔は映りません。

これは、――あの人――です。

アニメ第2期を予感させるワクワク場面となりました。

ここでの文章はもちろんネタバレを含みますので、お読みくださる場合はその点をご注意願います。

魔法科高校の優等生 第13話のあらすじ要約


長らく続いた九校戦も終わりに近づきました。

そしてそれはこのアニメ『魔法科高校の優等生』の終わりも意味し、今回の第13話で最終話となります。

2095年8月11日。ミラージ・バット本戦の決勝となりました。

日が暮れて辺りに暗闇が広がるさなか、競技会場だけが煌々と照明に照らされています。

空中に浮かぶホログラム光球を打つ《ミラージ・バット》には最高の時間です。

観客席には第一高校から第九高校までの大勢の生徒たちの姿が見えますが、なぜか観客たちの顔に笑みはなく、試合前の興奮から来るざわめきもありません。

そんな中、第三高校の生徒たちが集まるエリアには一条将輝と吉祥寺真紅郎の姿がありました。

「ミラージ・バットは、九校戦の花形競技だというのに盛り上がりに欠けるな……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

将輝は左隣に座る親友の真紅郎にだけ聞こえるようにつぶやきます。

「この試合で一高が入賞したら総合優勝も確定だからね。他校にとってはすでに消化試合みたいなものさ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

現状を正しく分析した真紅郎らしい答えです。そのために競技場が盛り上がっていないのも頷けます。

「すまない」

将輝の突然の陳謝に真紅郎は驚き顔になります。

「俺がモノリス・コードで勝っていれば……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

見ると将輝は頭を抱えて俯いています。

どうやら一高相手の敗北が相当堪えているようです。

「あ、いや、あれは僕にも責任が……」

将輝の落ち込みに戸惑った真紅郎が言い訳のように発言します。

「三高が総合優勝して大会最後の夜のダンスパーティーで司波深雪さんと踊るという俺の夢は、もはや風前の灯火だ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

将輝は目を見開いて絞り出すように言葉を発しました。

その目つきはちょっとヤバめです。

「……え?」

真紅郎は将輝の考えに付いて行けないようで、ちょっと引き気味です。

「だがまだ希望を残っている! 頼む一色、勝ってくれ! 俺の夢のために!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

顔をガバッと上げた将輝が絶叫のごとく叫びます。

そしてその周囲にいる第三高校の生徒たちですが視線を合わせぬようにして無言のままやり過ごしています。

将輝はイケメンで資産家の嫡男で十師族一条家の跡取りという超絶エリート勝ち組の魔法師です。

そして冷静に物事を判断できる高い知性を持つ少年でもあります。

そのことから第三高校の中では、同学年だけでなく上級生たちからも一目も二目も置かれている存在だと想像できます。

ですが周囲の生徒たちの冷めた顔つきを見ると、親友でいつも近くにいる真紅郎は気づいていないようですが、将輝は学校内で今回のように残念な言動をいくつかやらかしているのかも知れません。

いずれにせよ”本篇アニメ”である『魔法科高校の劣等生』では登場しなかった将輝の隠された一面が現れて思わず笑ってしまう場面です。

「……将輝」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真紅郎が発言の真意を問い詰めたいと言った感じに言葉を口にするのでした。

そして場面は競技場となります。

すっかり夜となった暗い空の下、ひときわ高い白色の円柱形の櫓の上に深雪の姿がありました。

深雪は眼下にいる達也の方を見ます。

そこには達也の他に七草真由美と中条あずさの姿もあります。

深雪の視線に気づいた達也が一度頷きます。

それに返礼するように深雪も笑みを浮かべて頷きました。

仲の良い兄妹ならではの以心伝心でしょう。思いっきり飛んでこいと言う達也の言葉に深雪がわかりましたと返答したのかも知れません。

そして第三高校でも水尾佐保と一七夜栞、四十九院沓子の姿が見えます。

3人とも微笑をたたえています。おそらく愛梨の健闘を祈ったのかも知れません。

それに気づいた愛梨ですが表情が冴えません。そして観客席をぐるりと見回します。

「……やっぱり来てないか」

場面は愛梨の回想シーンとなります。

一色家の屋敷と推察できる広い屋敷にある広い庭。そこに一本の大樹があり、その下にふたりの女性がいます。ひとりは第三高校の制服姿の愛梨、そしてもうひとりは白いブラウスに白いロングスカート姿の大人の女性です。

この女性は愛梨の母に違いありません。

「ごめんなさい、会場には行けそうになくて……」

愛梨の母がすまなそうに言葉を告げます。

「大丈夫です。お母様がいらっしゃらなくても、私は一色家の者として立派に戦って見せます」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

笑顔を見せる愛梨ですが、どことなく気負いが感じられます。

「愛梨。たくさんのものを背負わなくていい。本当に大切なもののために、戦いなさい」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

娘のことなどすっかりお見通しの母から、家の名誉のためだけに戦おうとしていることをすっかり見抜かれてしまいました。

「……お母様」

愛梨は反論ができなかったようで、これ以上の会話はありません。

そして場面は《ミラージ・バット》に戻ります。

白色を基調として赤いラインが特徴の衣装を身につけた愛梨が俯いて目を閉じています。

「……私の成すべきことは、全力でこの試合に勝つ! それだけよ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

試合開始のブザーが鳴り始めました。

「ミラージ・バット本戦決勝、試合開始です!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

男性アナウンサーの声が試合会場に高らかに響きました。

まっさきに飛翔したのは深雪です。

気合いがこもった表情の深雪はすぐさま直上に浮かぶホログラム光球に向けて飛びます。

深雪は光球のひとつを叩き消すと地上を見下ろしました。

すると他校の選手たちも一斉に飛び上がってくるのが見えます。深雪と同高度まで達すると光球を叩き始めました。

そして最後に飛翔したのが愛梨です。愛梨もすぐさま光球を叩き消すのでした。

観客席では今までの《ミラージ・バット》とは異なる風景が見られます。

選手たちが全員空で競い合っているので、観客たちはみんな宙を見上げているのがわかります。

そして第一高校の観客席ではほのかと雫、そしてエイミィの3人の姿がありました。

「選手全員が飛行魔法を?!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

ほのかが驚きの声を上げます。

これは参加選手全員が飛行魔法を使用していることへの驚きではありません。

第二高校から第九高校まですべてに飛行魔法の情報が開示されているのは、ほのかも当然知っているはずです。

ではなにに驚いたのかと言うと、ほのかとスバルは九校戦前に達也から”飛行魔法”の使用を打診されています。

ですが使いこなすには時間が必要なことから辞退しているのです。

「僕とほのかも司波くんから勧められたけど、使いこなすには時間が足りなくてね」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

これは第12話「飛びます!」の中でスバルが口にしたセリフです。

つまり自分たちが使いこなせなかった”飛行魔法”が深雪以外の選手たちはぶっつけ本番であったにも関わらず使用できていることに対しての驚きだと思われます。

そのことから《ミラージ・バット》本戦決勝まで勝ち進んできた上級生(愛梨を除く)たちのレベルが《ミラージ・バット》新人戦の優勝者、準優勝者のほのかとスバルより明らかに上回っているというのが如実にわかるシーンです。

(……やっぱり、お兄さまが大会委員にCADを提出した時点で予想していたけど)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

飛翔したままの深雪が冷静に他校選手たちを分析しています。

「無茶だわ。ぶっつけ本番で使える魔法ではないのに……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

貴賓席と思われる部屋では七草真由美が心配そうに話します。

「選手の安全より”勝ち”を優先するなんて……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

中条あずさも真由美同様にこの成り行きに不安を感じているようです。

「大丈夫ですよ」
達也がふたりにそう告げます。真由美とあずさは達也の声に振り向きます。

「あの飛行魔法はトーラス・シルバーが公開した術式をそのまま使用しているようですから、万が一の場合は安全装置が機能するはずです」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

会場の上空の戦いを見つめながら達也は言葉を続けました。

そして試合場上空。

そこには水平飛行をしている選手がふたりいました。

そして彼女たちの会話があります。

「うん、ちゃんと飛べてる」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

「いい感じ」

このふたりは他校生徒同士だと思えるのですが試合中に会話をするところを見ると以前からの顔見知りなのかも知れません。

そのふたりを白色の妖精が一気に抜き去ります。

「「えっ!!」」

声がハモりました。その驚きの相手は深雪でした。

深雪はホログラム光球の群れを見つけると巧みに飛行を制御して光球を根こそぎ奪っていきました。

「……そんな」

ふたりの選手たちは呆然となりますが、これは仕方ありません。

元々から深雪の方が魔法師としての実力が上でありますし、なにより”飛行魔法”をすでにマスターしているのですから並の選手たち共通の”本日生まれて初めて使用した付け焼き刃の飛行魔法”では対抗しようがありません。

深雪は白い光跡を引き高速で一直線に空を横切ります。

その姿はまるで長い尾を引く白色彗星です。

「……同じ魔法を使っているのに」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

今度は別の他校選手がぼやきますが、これもやはりレベルが違うとしか言いようがありません。

そして深雪は愛梨が狙った光球を真正面から奪う形で獲得しました。

(……く)

愛梨が悔しげな表情を浮かべます。

(やはり普通に飛べるだけでは司波さんには勝てない)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

現状分析をした愛梨の視界には右に左に高速移動しつつ得点を重ねる深雪の姿が見えます。

そのときでした。

苦しげな呼吸をしていたひとりの選手の腰の辺りから黄色く四角い魔法陣が突如現れます。

するとその選手はゆっくりゆっくりと地上へと足先から降りて来るのでした。

「あれが安全装置?」

真由美が空を見続けたまま達也に問います。

「ええ、サイオンの残量が少なくなると自動的に作動するんです」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也も空を見続けたまま、そう答えます。

「良かったあ~」

両手を胸の前に置き、甲高い愛玩小動物ボイスであずさが言います。

第一高校の小早川景子の事故があっただけにその口調には本当に安堵が感じられます。

そして、またも競技場上空でサイオンが枯渇状態となった選手のひとりの身体から黄色く四角い魔法陣が出現して、ゆっくりと降下を始めるのが見えました。

(どうやらちゃんと新しい魔法のアピールにもなっているな……)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也が胸の内でそうつぶやきます。

(なにより飛行魔法をこんなにも美しくデビューさせてくれて、ありがとう。深雪)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

飛行魔法自体はすでに発表済みの技術です。

それを他校から請われる形で提供し、そして世界的規模で注目されている九校戦で競技への実戦使用。

これで飛行魔法の魅力や実用性を訴求できるとともに(深雪にはあり得ない)サイオン切れの際の安全装置まで視聴者に伝えることが出来ました。

このことでFLTやトーラス・シルバーには莫大な利益が舞い込んでくるのは間違いないと言えるでしょう。

競技はまだ続いていますが、選手たちの数が減っています。

サイオン切れで次々と落伍者が出ているのです。

そして愛梨の真横を飛行していた選手もサイオン不足で魔法陣が出現して降下を始めました。それを見た愛梨が心の中でつぶやきます。

(……残るは3人。これで一高の入賞は確定。総合優勝も一高に決まり……)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

地上にある白い円柱形の櫓の上では息絶え絶えの選手たちがいます。

そして宙を飛ぶ愛梨の視線の先には追いつけない距離を保ちつつ飛翔する深雪の背中が見えます。

(このまま背中を見ているだけになってしまうの?)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そして深雪が左方上空へと高速で飛翔します。

画面には愛梨の心中のシーンとなります。

白色を基調とした衣装姿の深雪がステッキを伸ばしている華麗な姿が大写しになります。

(……遠い。これが練習の差? それとも才能の? いえ、そんなことはない。そんなことは……)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

愛梨の眼下にある第三高校の観客席では大勢の生徒たちが上空の試合を見上げています。

(でも、総合優勝は決まってしまった。もうこの試合を続ける意味なんて……)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そのときでした。

空を飛ぶ愛梨が驚きのあまり口を開けてしまいます。

それは観客席にやって来た母親の姿でした。長い金髪で左前を縦ロールにした髪型で薄緑色の丈の長いスカートのワンピース姿で両手を胸の前で組んで上空の愛梨を見上げています。

「……お母さま」

愛梨は思わず声を出してつぶやきました。

「本当に大切なもののために戦いなさい」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

愛梨の回想シーンが入ります。そこで母親がやさしく伝えていたことを思い出したのです。

現実に戻るとそこでは佐保と沓子が声を張り上げて愛梨に声援を送っています。

そして栞が胸の前で両手を組み、一心不乱に愛梨をその大きな瞳で見つめています。

その姿はまるで祈りを捧げる少女の姿で見ているだけで心が締め付けられる表情をしています。

愛梨の深く澄んだ青い瞳が厳しく引き締まります。

(……わかりました。お母さま)

そして地上の櫓に着地し右手首に装着された飛行魔法とは異なるいつものCADを操作します。

(私は……)

そして跳躍しながら今度は飛行魔法のCADを操作しました。

すると後方に四角く青い魔法陣が発生します。それを愛梨は足場にして加速しました。

「私は、諦めない!」

すると愛梨の後方に黄味を帯びた白い光跡が発生し、今までとは別次元の速度で一気に飛び出しました。

その光跡は時には直角に鋭角に進路を変え空を駆け巡ります。その姿はまるで流星です。

流星は深雪をあっという間に追い越して前方のホログラム光球の群れに突入すると速度を落とすことなく進路を変えて光球を捕捉し始めました。

それを見てさすがの深雪もあっけにとられた表情を浮かべました。

(飛行魔法に使い慣れた跳躍魔法のミックス。これが私の本気!)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

次々とホログラム光球を捉えた愛梨の叫びです。

飛行魔法の最中に直角や鋭角に一瞬で曲がることができるのは、おそらく跳躍魔法の魔法陣だと思います。

魔法陣を瞬時に展開させることでそれを足場にして進路を変えているのだと考えられます。

そして深雪も黙ってはいられません。

彼方を飛翔する流星に向けて一気に加速します。

純白の光跡が流星に追いつき並走します。夜空にふたつの流れ星が現れました。

そして眼前に現れた光球を愛梨が突き刺すように、深雪が真横から叩くようにステッキを振るとふたつのステッキが交差します。

そして愛梨が心で叫ぶのでした。

(これが私の全力よっ!!)

観客席は途端に盛り上がります。

深雪の独壇場かと思われた戦場に愛梨が互角の力で参戦したからです。

そして愛梨の母親も祈るように両手を組んだまま微笑を浮かべています。

そんな中、第三高校の観客席で将輝と真紅郎が難しい表情を浮かべて観戦していました。

「……まずいな、このままじゃ」

真紅郎が将輝に問うように言います。

空では黄色がかった白色の流星と純白の光跡が互いに交差するように舞います。

直角や鋭角と角張った方向転換をするのは跳躍魔法も混ぜた愛梨の光、そしてすべて曲線で方向転換しているのは深雪の光です。

「ああ。ただでさえ慣れていない飛行魔法に更に跳躍魔法まで使ったら一色がもたない」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

将輝が的確な分析を行いました。

「――じゃが、そんなことは百も承知で愛梨はあの魔法を使ったのじゃ。諦めずただ勝利のために」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

観客席の別の位置にいる沓子がそう告げます。

愛梨の親友だけあって愛梨の心理を読むのはお手の物のようです。

そして同じ場所にいる栞は涙を浮かべてただ観戦しています。

奇策を弄せず正々堂々と勝負に挑む愛梨の真っ直ぐさに心を打たれた様子です。

深雪の前には魔法陣を蹴り飛行しながらの跳躍を繰り返し進む愛梨の姿があります。

(……一色さん。この短時間で飛行魔法をここまで使いこなすなんて)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

愛梨に対する深雪の素直な称賛です。

深雪は愛梨と直接対戦するのはこれが初めてになりますが、ここまで愛梨が強い魔法師だとは思っていなかったのかも知れません。

観客席ではふたりの攻防に熱狂していますが第一高校の一年女子チームは仲間の深雪の心配で強ばった顔をしています。

深雪の魔法師としての実力と、そして飛行魔法を事前にマスターしている事実から決勝も深雪の独壇場と思っていたのですが、今日になって初めて飛行魔法を使い始めた第三高校の一色愛梨の動きに脅威を感じているからです。

「……深雪」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

雫が心配顔で言葉を口にします。

そしてほのかやエイミィ、スバルたちも応援をしています。

それを上空の深雪は気づきました。そして微笑をたたえます。

(ありがとう。みんな……)

そして第1ピリオドが終了しました。

ここまでの成績は1位が深雪で49ポイント、2位が愛梨で40ポイントとなっています。

そして試合はインターバルに入りました。

地上には白い櫓が建つ円形プールの外側に各校の技術担当が控えるためのスペースがあります。

第三高校のスペースのところへと戻りタオルで汗を拭いている愛梨に見えぬ位置で、栞が先ほど浮かべた涙を拭いました。

そして愛梨の元へと向かいます。

「何を恐れているの、愛梨?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

予期せぬ強い口調です。

そして表情も引き締まり愛梨を詰問しているかのように見えることから、佐保と沓子が驚きの表情を浮かべています。

「CADを調整したのは私よ。あなたはもっと飛べる。高く速く。だから信じて、あなた自身の力を。……そして私を」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

予期せぬ栞の叱咤に愛梨は虚をつかれたような表情になります。

この意を決しての栞の発言に佐保と沓子は、愛梨と栞の関係の微笑ましさを感じていたようで笑顔を見せました。

「……ありがとう。栞」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

一方の第一高校側に座る第一高校一年女子チームでも言葉のやりとりがあります。

「深雪がこのままなにもしなくても、一高の総合優勝は決まるが……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

スバルが意味深な口調でそう告げます」

「そうはしないよ。絶対」

背後に座っているスバルに雫が答えます。

「うんうん!」

エイミィも背後にいるスバルを振り返り、こう言います。

「だって深雪だもんね」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

雫の右に座っているほのかが笑みを浮かべてそう言います。

もう深雪の性格はすっかりわかっているとでも言いたげに見えます。

そして深雪の登場です。ここは円形プールの外側にある第一高校の技術担当が控えるためのスペースです。

「最後まで戦います!」

意思の籠もった強い目で達也、真由美、あずさに深雪は訴えます。

「私のわがままなのは承知しています。この試合の持つ意味も理解しているつもりです。でもだからこそ私は最後まで全力で戦いたいのです。お願いします」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

ここまで無言で深雪の言葉を聞いていた達也が口を開きます。

「深雪。お前は自由だ。思う存分飛んで来なさい」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也が許可を出します。

ここまでの第一高校の成績から深雪は別段優勝しなくても3位以内に位置すれば第一高校の総合優勝が決まります。

そのため無理に優勝を狙うことで怪我でもして途中欠場となるくらいなら消化試合としてのんびり戦う方法も正攻法です。

ですが深雪はそれを望んでいません。

一色愛梨と言う全力で戦える相手がいることで悔いのない試合がしたいとの気持ちからの願いでした。

そしてそれを達也は受け入れました。真由美もあずさも表情を見るに異論はありません。

「はい!」

深雪が去りました。

「総合優勝のことを考えたら止めるべきなんだろうけど……。ダメね、私って」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美が達也に自分の考えを伝えます。

「いいえ、尊敬しますよ。生徒会長」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也が偽りない気持ちの返事をしました。

会場にある白い円柱状の櫓に愛梨が降り立ちました。そして遅れて深雪も降り立ちます。

愛梨は深雪に真剣な眼差しを向けます。一方の深雪は微笑で答えます。

そして試合再開の合図が鳴り響きました。

合図と同時に愛梨が一気に飛翔します。跳躍魔法を併用した飛行で夜空に直線的な光跡が残ります。

「見ていてくださいお母様。栞に沓子、先輩たち、大切な人たちと共に戦うこれが今の私です」

そして遅れて深雪がCADを操作し飛び立ちます。

「……一色さん。あなたにもゆずれないものがあるなら……。この試合は私だけのものじゃない。

みんなが必死に戦ってきたからこそ、私はこの舞台に立てている。ここまで繋いでくれたみんなの思いに私も応えたい。

そして私にも絶対にゆずれない想いがある!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

ここでこの第13話のサブタイトルでもある「ゆずれない想い」の一文が登場しました。

そして深雪が白い光跡となってホログラム光球の中を飛び抜けます。

黄色がかった白色の流星となった愛梨を後方から追い抜き空を支配します。

「……あ!」

圧倒的な勢いで飛ぶ白い光跡に追い抜かれた愛梨は思わず声を漏らしてしまいます。

(これはお兄さまの魔法だから……。この翼はお兄さまがくれたものだから……。お兄さまに恥じない勝利を!)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

深雪を追うように愛梨が鋭角な軌道で追随し叫びます。

「まだよ!」

夜空では曲線の光跡を描く深雪と鋭角な光跡を描く愛梨との空中戦を思わせるような激しい攻防が見られます。

双方とも強烈な勢いでホログラム光球を叩いていると思われます。

それを観客席の生徒たちは魂を抜かれたかのようにぼうっとした表情で見上げています。

規格外のバトルを見てしまったことで我を忘れているようです。

「深雪~っ!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

第一高校の観客席では声も枯れよとほのかが叫びます。

そしてスバルは立ち上がっての声援です。冷静な性格のスバルには珍しい行為です。

それだけ深雪の頑張りを知っているからかもしれません。

「行けぇ~、そこだ~っ!」

第三高校の控え室では沓子がモニタ越しでの応援をしています。

そして第三高校の円形プールの外側にある控えスペースでは栞と佐保の姿があります。

「愛梨、あなたはもう……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

栞の後半の言葉は涙で途切れました。

その肩に佐保がそっと手を乗せて優しい笑顔になります。

栞が感激したのは愛梨の飛行魔法の素晴らしさです。自分が調整したCADを使い、更に独自に跳躍魔法を加えたことで、あの第一高校の司波深雪に対抗できていることが誇らしげで感無量となったのです。

そしてそのことは三高三美娘のお姉さん役である佐保にはしっかり伝わっていたのでした。

空ではすさまじい空中戦が繰り広げられています。

愛梨がひとつホログラム光球を叩けば、深雪も負けじと叩きます。

(……深雪)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也が無言で空を見上げます。

そして夜空に残った光球の最後のひとつ。

愛梨も深雪も双方距離を置いてからの突撃となります。

「「はあーっ!!」」

それは西洋中世騎士による馬上からの巨槍ランスの一騎打ちさながらに、真正面からの激突となりました。

双方互角に見える中、互いの魔法とホログラム光球がまばゆい光を放ち夜空を明るく染めました。

この攻撃、深雪は愛梨を完全に対等のライバルと見なしています。

第一高校に入学したことで親友は多くできましたが、対等の魔法を行使できる同級生はいませんでした。

この後、冬になるとUSNAからリーナが交換留学生としてやって来ます。

リーナはUSNAの戦略級魔法師であることで世界でも屈指の実力を持っており、深雪と対等の勝負ができるのですが、この九校戦時点では深雪のライバルはいませんでした。

ですがこの”優等生”はスピンオフ作品であることから”本篇アニメ”には登場しないオリジナルキャラの愛梨が登場したことは深雪にとっては幸せだったのかもしれません。

そして場面が代わります。

時は同じく8月11日の夜。場所はおそらく横浜市内にそびえ立つ巨大なビルディング。

そのビルの施設管理用の屋上付近に達也と独立魔装大隊少尉の藤林響子の姿がありました。

本編アニメと同じ設定であれば、このビルのこの場所に到達するまでの各種セキュリティは「電子の魔女〈エレクトロン・ソーサリス〉」の異名を持つ響子がすべてを解除しています。

達也は夜に目立たぬように黒を基調とした服を着ているのですが、響子は陸軍女性士官の制服です。

ここは身分がバレたら困る状況だと思うので、なぜこの場にこの軍服なのかわかりません。

そして達也の殺意の籠もった冷たい声が響きます。

「ハロー。ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部の諸君」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

伸ばした腕の先にはいつもの拳銃型CAD《シルバー・ホーントライデント》があります。

このCADは達也自身が製作に深く関与したもので分解魔法に特化させているというまさに達也のためだけのCADです。

そして銃口ははるか遠くにある《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》に向けられているのでした。

そして立ち上るサイオンの粒子……。

そして再び場面は変わります。

今度は九校戦参加選手たちが宿泊している富士演習場内にある温泉の女湯です。赤い暖簾が目立ちます。

「はあぁぁぁぁ~。やっぱり試合の後のお風呂は最高だよね~」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

専用の浴衣姿で湯に浸かるエイミィがしみじみとつぶやきます。

「試合をしてたのは深雪だけだろ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

すぐそばで入浴していたスバルがツッコミを入れます。

ボケのエイミィと自己陶酔的なシーン以外は常識人なスバルの人柄がわかる場面です。

(……お兄さま。どうかご無事で……)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そんな中、浴槽の中でひとり離れて夜空を見上げる深雪が儚げな表情を浮かべ心の中でつぶやきます。

このセリフから深雪は達也が今どこにいてなにをしようとしているのかおぼろげながらわかっていることが判明します。

ですがはっきりと「ちょっと横浜まで行って《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》の幹部を皆殺しにして組織を壊滅させてくる」とはさすがに言わないでしょうが、なによりも達也を案じる深雪ですので経験的に達也の目的がわかったのだと思います。

そのときでした。女湯の扉が開く音がしたことで深雪はそちらに視線を向けます。

「……あ」

深雪の短く声を漏らします。入ってきた意外な人物に驚いたようです。

「……あ」

相手も驚きの声を上げました。入ってきたのは愛梨たち三高美娘たちでした。

「ああっ」

扉付きのシャワーブースから頭を出したほのかも驚いた声を出しました。

「おー、奇遇じゃな」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そんなほのかに気づいた沓子が気軽に声を掛けます。沓子にとってほのかはもうすでに友人としてカウントされているようです。

「……うぁぁ」

浴槽に浸かっていたスバル、エイミィたちもなんとも言えない気まずさを感じた声を漏らします。

一方の愛梨たちですが、手を振り愛想を振りまく沓子以外は愛梨も栞もどういう行動を起こすのがベストなのかわかりかねている表情です。

そんな中、自分を見つめながら目を見開いたままの深雪の視線に気づいた愛梨が一度目を伏せた後に意を決したかのように言葉を告げます。

「優勝おめでとう、司波さん」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

その言葉を受けた深雪にエイミィたち第一高校一年女子チームたちの視線が集中します。

「……ありがとう、一色さん」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そう応えた深雪を見てエイミィたち第一高校一年女子チームたちから安堵の息が漏れました。

そして浴槽に向かう愛梨たちでした。

そして場面はまたた夜の横浜市に戻ります。

壁に空いた大穴から達也たちがいるタワーが見えます。この穴は《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》の建物に空いたもので達也の雲散霧消〈ミスト・ディスパージョン〉によって空けられたものです。

そして建物の床には宝石類が散乱しています。予期せぬ襲撃で室内は椅子も円卓もばらばらになっている状態です。

どれもこれも違法行為で手に入れた蓄財だと思われます。

拳銃型CADを構えた《ジェネレーター》が青い炎となって消滅しました。これももちろん達也の雲散霧消〈ミスト・ディスパージョン〉です。

そして幹部のひとりも消滅しました。

それを見た支部長のダグラス・ウォンが悲鳴を上げて床にへたり込みました。

「……ま、待ってくれ。我々はこの件から手を引く。この国からも出て行く……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

右手を達也のいる方角へと向けて命乞いを始めます。

しかし次の瞬間にはダグラス・ウォンの右側にいた幹部が消滅します。そしてひとりまたひとりと消滅していくのでした。

「……なぜだ? 我々は誰も殺さなかったではないか!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

自分たちの犯した罪より重いこの達也による制裁に納得いかないとウォンは命乞いをします。

しかしそもそも自分たちが許可も得ないで勝手に始めた賭に負けそうだからといって高速道路で自動車をぶつけようとしたり、CADの細工して渡辺摩利と小早川景子を退場に追い込みました。

そして達也を狙って地下水脈に細工を施して第三高校の一条将輝に達也を過剰攻撃させようとしたことに加え、最後には深雪のCADにウィルス混入をしかけました。

これらすべてが《ノー・ヘッド・ドラゴン》が身勝手に行った行為なので、自分らがなにもしなければ今回の達也の報復を受けることにならなかったはずです。

にもかかわらず原因を作った自分らを助けて欲しいとはかなり虫が良い話です。

しかしここまで過剰とも言える報復を受けたのはお気の毒ではありますが、これもやはり悪事をするなら相手を選んですべきなのに、相手が司波達也だったと言うことを事前に調査しなかった《ノー・ヘッド・ドラゴン》の落ち度なので同情には値しません。すべては身から出た錆です。

「お前たちが何人殺そうが、何人生かそうが、俺にはどうでもいいことだ。お前たちは触れてはならないものに手を出した。ただそれだけのことが、お前たちが消え去る理由だ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

通信機を使い達也はダグラス・ウォンにそう伝えます。

「……悪魔め」

ウォンがつぶやきます。

「悪魔か。そうだな、お前たちが俺の持つ唯一の感情を引き出したお陰で俺は久々にこの悪魔の力を解き放つことができた」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也が怒りを含んだ低い声でそうウォンに伝えます。そしてこの”唯一の感情”とは怒りです。

四葉家の施術で感情を表に出せない体質にされた達也ですが、深雪に対する悪意、害意が深雪に及んだときにだけ”怒り”の感情が浮き上がる。

それが達也です。

「……悪魔の力だと? この魔法。まさか3年前の沖縄でのデーモン・ライトっ!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

その叫びの声を最後に支部長のダグラス・ウォンは消滅しました。

そしてこの瞬間、《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》は完全に壊滅したのです。

ダグラス・ウォンの言葉にある《デーモン・ライト》とは3年前の沖縄で侵攻してきた大亜連合軍たちを次々と消滅させて大打撃を与えた達也のことです。

無慈悲に、そして文字通りにこの世から消してしまう攻撃に大亜連合軍の兵士たちが恐怖とともに名付けたものが《デーモン・ライト》です。

そして使われた魔法はもちろん雲散霧消〈ミスト・ディスパージョン〉でした。

このときの達也の存在は大亜連合軍内では公式には認めていません。

ですがダグラス・ウォンは《ノー・ヘッド・ドラゴン》の幹部だけあってこの極秘情報を知っていたようです。

3年前の沖縄のことと言えば2021年に新作としてテレビ放映された『アニメ魔法科高校の劣等生 追憶編』が該当しますが、このアニメでは達也の活躍がいくつか割愛されてしまっています。

3年前の沖縄の事件を正確に知りたいのであれば原作小説である『魔法科高校の劣等生8 追憶編』がベストです。

ですが当時の達也と深雪の関係、そして起きた事件の概要だけを味わいたいのであれば『アニメ魔法科高校の劣等生 追憶編』は推しです。

話を戻します。

場面は3年前の沖縄での回想シーンとなります。

迫り来る大亜連合海軍の艦隊。反乱兵士に銃撃されて倒れる深雪と手を伸ばす達也。

そして血だまりの中で瀕死の深雪を抱きしめる達也。

そして深雪を救うために発動される達也の『再生魔法』。

深雪を守ることがすべての達也にとって思い出したくもない悪夢のシーンです。

(……もうあんなこと二度と)

ビルの屋上で達也はそうつぶやきました。

そして場面はまたホテルの大浴場でのシーンとなります。

殺伐とした達也の報復シーンとの対比でこちらはほのぼののんびり雰囲気となります。

黒髪のてっぺんにアホ毛がある沓子の長い髪をシャンプーしているのは、ほのかです。

髪を洗われている沓子は腕組みをして偉そうな様子に対して髪を洗う側のほのかは苦笑い。

完全に主従関係が決定しています。これではどちらが《バトル・ボード》女子新人戦の優勝者かわかりません。

また浴槽の縁に腰掛けた栞が雫と談笑しています。

表情が乏しく口数が少ないのが共通するふたりですが笑顔で楽しそうです。

このふたりは《スピード・シューティング》女子新人戦準決勝で対戦した仲ですが、すっかり打ち解けたように見えます。

そんな中、深雪は静かに浴槽縁に腰掛けていました。

左隣には愛梨がいるのですが愛梨は目を閉じて静かに俯いています。伏せた長い睫毛が印象的です。

(……この瞬間が少し苦手だ。自分の言葉や態度が驕っていないかわからなくて戸惑ってしまう)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

深雪の性格の良さがわかる内心の言葉です。

「私、どうしてもあなたにお礼が言いたくて」

真横に座る愛梨が突然に発言します。

「え……?」

深雪は意味がわからず問い返します。

「今日の試合でわかったわ。あなたの才能、そして自分との圧倒的な力の差を。

……でもあなたと戦って私は気がついたの。自分自身の可能性にね」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

笑顔になった愛梨がそう告げます。

「可能性?」

またまた深雪が問い返します。

「跳躍魔法と飛行魔法を同時に使うなんて、あなたがいなかったら思いつきもしなかったわ。

もっと練習すればもっと速く飛べる。

試合には負けたけれど私は素晴らしい経験を得られた。だからお礼が言いたかったの」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

愛梨が満面の笑みを見せました。

これはおそらくこの『魔法科高校の優等生』始まって初の披露です。

「ありがとう、司波さん」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

驚きで目がまん丸になった深雪です。

「そんなふうに考えられるなんて、あなたはやっぱりすごいわ」

深雪も愛梨に劣らない満面の笑みを見せました。

「すごいのはあなたよ。司波さんみたいな人と同世代でいっしょに戦える機会があってラッキーだった」

「私もよ。一色さんが本当に強くて必死だったわ」

「本当に? だったらとても光栄だわ。来年は私も成長して、あなたをもっと必死にさせてみせるわ」

「あら、負けないわよ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

深雪と愛梨と言う実力者のライバル同士で良い感じの会話が続きます。

ですが、実やそのふたりの会話などそっちのけで浴場内ではドタバタ騒動が起きています。

浴槽の湯が突如水龍となり大浴場内を狭しとうねりながら飛び回り始めました。狙われるのはやはりと言うかやっぱりほのかです。

口先を器用に使った水龍は牙でほのかの浴衣をつまみ上げ全裸にしてしまいました。

そこでほのかの恥じらいの絶叫が浴場内に響き渡ります。

水龍はその長い巨体をうねらせて飛び回るのでいつ誰が襲われるのかわかりません。

菜々美と和実が抱き合って怖がっているのが見えます。

そしてこの悪事の原因はもちろん《水のエレメンツ》である沓子です。

沓子は万歳をしながら喜んでいるのですが、その横にはエイミィの姿があり、エイミィも満面の笑みで万歳です。

沓子も悪ノリが好きそうですが、悪ノリと言えばエイミィですのでこれはエイミィに沓子がそそのかされて行った可能性が高いです。

そして沓子とエイミィの眼前をタオルで身体の大事な部分を隠しながら、盗まれた浴衣を求めて水龍を追って走るほのかの姿が見えます。

そんな中、浴槽内では雫と栞の姿がありました。

雫は鼻下まで湯につけてブクブクと息を吐いています。

「……それ、私もやってみようかしら」

栞がそうつぶやきます。

このブクブクになんの意味があり、なぜ栞が真似したいのかは不明です。

ですがこの場面の雫と栞はデフォルメで描かれており、ほのぼの画風なので特に考えることなく楽しめば良いと思われます。

そして最後の締めは鹿威しのコーンと言う音でした。

この鹿威しはたぶんホテルの庭にあるのだと思いますが、これもその位置を深く考察する必要はないと思われます。

そしてそのまま時間経過があり、夜の宿泊ホテルの屋上には深雪がひとりで立っていました。

そして地上のなにかにハッと気がつき持っていた飛行魔法用CADを作動させて屋上フェンスを越えて地面へと飛行します。

「お兄さま」

地上にいるのは達也でした。

達也は横浜からの帰りでそのときの黒ずくめの服装のままでした。

高度を落とした深雪は達也に向かって両手を伸ばします。

「お帰りなさいませ。ご無事でなによりです」

そして満面の笑みを浮かべて達也の胸へと飛び込みました。

「ありがとう。ただいま深雪」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也は深雪の頭をなでながらそう言いました。

そしてふたりは長く抱き合うのでした。

このシーンで深雪は達也がどこかに荒事をしに出かけていたのを知っていたのがわかります。

そのことから屋上で待っていたわけですが、達也が《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》を壊滅させに横浜まで出かけていたことまで知っているのかは疑問です。

そういう荒事を達也は深雪にいちいち報告しないからです。

ですが深雪は詳細は知らなくても、どうしても必要な用事があって出かけたくらいは察知していると思われます。

そしてその夜のホテルの大ホールとなります。

ここは九校戦の後夜祭が行われている会場なのですが九校戦開幕前に懇親会が行われた場所と同じです。

会場には楽団が演奏しておりヴァイオリンやフルートなどを演奏している楽士たちが登場します。

この楽士たちはその容姿から魔法科高校の生徒ではなく依頼されて演奏している楽団と思われます。

これが普通のホテルであればプロの交響楽団が呼ばれると思われますが、ここは富士演習場で国防陸軍の基地内なことから陸軍の軍楽隊だと思われます。

楽団員に女性の姿が多く見られますが、この時代だと軍隊で働く女性はかなり多いので珍しくないのかもしれません。

楽士たちがパーティー向きの楽曲を演奏している中、魔法科高校の各校生徒たちはそれぞれの制服姿で談笑しています。

そこにはアルバイトとして潜り込んだ千葉エリカがウェイトレスとして働く姿があります。

またこの『魔法科高校の優等生 第6話〈九校戦、開幕です〉』の懇親会シーンには登場せず、また”本篇アニメ”である『魔法科高校の劣等生10 〈九校戦編Ⅲ〉』でも見られなかった柴田美月のウェイトレス姿が見られます。

”本篇アニメ”の方ではウェイトレス姿が嫌とのことで厨房で皿洗いをしている設定でしたので、これは貴重なシーンだと思われます。

そしてその美月は他校男子生徒たちに囲まれてしまい口説かれているようです。その後方にはそんな美月を見て慌てる吉田幹比古の姿も見られます。

美月はおとなしい印象の正統派美少女で光井ほのかに負けないスタイルの持ち主なので他校男子生徒に声を掛けられるのは仕方がないと思われます。

会場内は和やかな雰囲気で異なる制服同士で楽しげに語らいをしていることから他校の生徒との交流も行われているのがわかります。

またそんな中、空になったグラスを片付けるボーイ姿のレオもいました。

そしてある場所では驚きのあまり大声をあげてしまった生徒がいました。

それは第三高校の一条将輝です。

「――え、ええっ! 兄妹だったのか?」

その驚愕の将輝を見て達也が無表情で言葉を返します。

「気づいてなかったのか……」

「将輝……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そのやり取りを見た吉祥寺真紅郎は情けなさの余りなのか右袖で目元を抑えて泣きだしそうな声を出します。

そしてしばらく立ち直れませんでした。

そして深雪が右手を口に当てて笑顔を見せます。

「うふふ。一条さんには私たちが兄妹に見えなかったのですね」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

ここで一条将輝の性格の知られざる一端が見られました。

将輝はイケメンで文武両道の十師族の跡取りであるエリート魔法師。

これは揺るぎない真実なのですが、どこか抜けている天然要素があるようです。

司波達也と司波深雪。

司波と言う苗字はそうそういなさそうに思えますが別に学年に2人いても不思議じゃない苗字です。

ですので同じ苗字と言うだけで兄妹とは断定できないことから、この部分だけで将輝の間違いを馬鹿にすることはできません。

しかし達也が高校生レベルを遙かに超えた天才エンジニアで試合でも《モノリス・コード》新人戦で将輝を破る実力の持ち主です。

そして深雪は《アイス・ピラーズ・ブレイク》新人戦、そして本日行われた《ミラージ・バット》の優勝者です。

しかも《アイス・ピラーズ・ブレイク》では〈ニブルヘイム〉や〈インフェルノ〉を行使した規格外の女子高生ぶりを全国に知らしめました。

こういう他の魔法師たちを超越した力を持つ同じ苗字を持つ2人が無関係なはずがありません。

真紅郎が情けなさの余りに涙したのは、兄妹という確信は持てなくても、できれば予想くらいはして欲しかったからでしょう。

「まさか司波さんの兄とは似てなさ過ぎだ。気づく訳ないだろう」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

慌てふためく将輝は呂律が少々アヤシイです。

「将輝! いや気づくだろ、普通っ!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真紅郎の堪忍袋の緒が切れたようで、少々怒鳴り声となりました。

そして哀れな将輝は真紅郎に首根っこを掴まれて引っ張られて行きました。

「司波さん、一曲、おあい……、お相手を願えませんか…………」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

と、言う言葉を残しながら……。

大ホールは吹き抜けの構造となっているので二階は狭くて窓際に一列だけのテーブル席となっています。

そこに第一高校の七草真由美、渡辺摩利、中条あずさの三人がいます。

そこで達也、深雪、将輝、真紅郎の交流を見ていました。

「あぁ~……」

あずさがため息に似た声を漏らします。

「どうしたの?」

摩利が問います。

「今回の優勝の立役者は、やっぱり司波くんだと思うんだけど」

「そうね。エンジニアとしても選手としても大活躍だったわ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美があずさの意見に同意します。

「……そんな司波くんがどうして二科生なんだろう?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話「ゆずれない想い」

「ん?」

真由美が問います。

「彼の知識や技術は私なんかより遙かにスゴイです。……それなのに司波くんは二科生で。

……一科生と二科生の違いってなんですか? なにをもって劣等生とか優等生とか言ってるんですかね……?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

この疑問をあずさが感じたということは重い意味を持ちます。

あずさは二学年主席の成績をいつも生徒会副会長の服部刑部と競う程の実力者です。

そんなあずさだけに学校の成績と実際の実力の乖離に疑問を持たずにいられないのでしょう。

画面では階下の大ホールの様子が流れます。

深雪の元に訪れた第三高校の一色愛梨、一七夜栞、四十九院沓子の三人美娘を深雪が達也に紹介しています。

男役に徹した里見スバルが明智エイミィとダンスを踊っています。

恥ずかしさの余り尻込みしている光井ほのかを親友の北山雫が背中を強く押して達也の前へと突き出します。

それを察した達也の方からほのかにダンスへの誘いを行います。

そしてほのかは超赤面となり幸せの余り気を失って倒れかけますが、そんなことは百も承知の雫が支えます。

ちなみにほのかの嬉しさの余りの失神シーンは『魔法科高校の優等生 第2話〈ご一緒してもいいですか?〉』以来です。

このときは深雪に司波さんではなく”深雪”と呼び捨てにしていいと言われての失神でした。

そしてあずさの質問に真由美が答えます。

「彼は特別。魔法工学面の知識と技術では誰も達也くんには適わないわ」

「一科と二科の違いは実技テストの差。それだけだ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

摩利も答えます。

その言葉の中には学校制度への皮肉が含まれているのが伝わります。

「この制服がいけないのかなあ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美の言葉が自分の制服の肩にある校章を指さします。

「元々、生徒を増やす際に刺繍が間に合わなかっただけなのに……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美が裏話を披露しました。

「はえっ?」

あずさが驚きの声をあげました。

「あれ?」

あずさの反応に摩利が驚きの反応を示しました。

「あーちゃん、知らなかったの? 魔法師を増やすために年度途中に生徒を追加募集したのが二科生の始まりなんだけど、教師不足で追加生は理論だけ学習して実技は新年度からということになったの。

だけどなんと入学の際に制服の発注ミスがあって二科生の制服にはエンブレムがなかったわけ……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

場所を変えた真由美と摩利、あずさは大ホールの後夜祭会場を歩いています。

「は、発注ミスぅ~?!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

あまりもの度し難い真実を知ったあずさが呆れと驚きの混じった声を上げます。

「さらに結局、教師不足は解消できず誤解が追認されたと言うか、放置されたのが今の一科、二科の制度よ。

今となっては二種類の制服を作る方が手間なはずなのにねぇ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美が第一高校の隠された歴史を語り終えました。

「そ、そんなくだらない理由であの深刻な対立が?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そう答えるあずさの顔は真剣です。

たぶん怒りも入っていると思われます。

「まあ、そのくだらない話に一部の一科生のエリート意識が拍車を掛けてしまったのも事実だ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

摩利が真由美の言葉を補足します。

そして3人は窓際に到着しました。

真由美が暗い窓の外をながめながら発言します。

「だから私の代でなんとかしたかったんだけどね……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

これは偽りのない本音だと思います。

真由美は十師族七草家の令嬢で学業もトップクラスの優等生ですが、二科生を見下すような偏ったエリート意識は微塵も持ち合わせていないことは普段の言動でわかります。

「あ」

なにかに気づいた真由美は口に人差し指を添えてあずさに言います。

「ちなみに深雪さんには絶対に内緒ね」

「あ、はい。もちろんです。こんなことが知られたら大変なことに……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

あずさが引きまくりのマジ絶望顔になっていますがそれは止む無しです。

達也の名誉に関することになると我を忘れて暴走するのが深雪です。

この真相を知ったならば当時発注ミスをしてしまった教員や発注内容の最終確認を怠った学校指定の洋品店担当者のもとを強襲して弁明も有無も言わせずに振動系広域冷却魔法《ニブルヘイム》で氷柱にしてしまうのは火を見るより明らかだからです。

「どうしたんですか?」

そこに深雪の声が聞こえます。まさに噂をすれば影がさすです。

あずさは焦りまくりで深雪を見ます。

「なんでもないのよ。ふふふ」

真由美はさすがの落ち着きです。

「あの、ところでお兄さまを見なかったでしょうか?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

深雪の用事は達也の行方でした。

そのため見かけた真由美たちに声をかけたようです。

「あー、達也くんならさっき十文字に誘われて中庭の方に出て行ったが」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

知っていた摩利がすぐさま答えます。

「「ええっ~!」」

ここで悪ノリのデフォルメバージョンの真由美とあずさが登場です。

そしてもちろん寸劇が始まるのです。

「踊ってくれるか? 司波」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

心なしか頬を染めて達也を見下ろす一高制服姿の克人。

辺りには薔薇の花びらが飛び交います。

そして声は真由美です。

「喜んで、十文字先輩」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そう答えるのは達也役のあずさ。

両手を組んで握りしめ、うるうる目で見上げます。そんなあずさの両肩を克人役の真由美が手を起きます。

周囲には薔薇の花が咲き乱れ禁断の恋を彩ります。

「そんな訳あるかっ!」

摩利の厳しい突っ込みが入ります。
ですが達也に関することになると途端に辺りが見えなくなる深雪は真に受けてしまいます。

焦りを浮かべた顔になってなり思わず言葉が口から出ます。

「……ま、まさか?! お兄さまっ!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そして踵を返し急加速して駆け出してしまいました。

その場に残された真由美とあずさですが摩利が左右の手で首根っこを掴んでふたりを宙ぶらりんにしています。

深雪にはやり過ぎの悪ふざけをした罰のようです。

そして大ホール外の中庭。もちろん室外なので真っ暗です。

達也の姿を探して辺りをキョロキョロと見回す深雪。

すると足音がして十文字克人が姿を見せます。

その克人は深雪に目もくれずまっすぐホテルへと戻ります。

(……十文字先輩。と、いうことは!)

引用:魔法科高校の優等生 第13話

焦りの汗を浮かべた深雪は中庭中央にある池へと走ります。

小走りではなくかなりの速度です。

「お兄さま」

叫びながら達也の元に到着した深雪は達也の胸に飛び込みます。

「どうした? 夜にこんなに走っては危ないよ」

「はい。……でも、あの、十文字先輩とはなにを?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也を見上げる深雪の顔は必死です。

完全に真由美とあずさの寸劇を信じ切っている様子です。

深雪は賢い少女ですが達也のことになると周りが見えなくなり冗談を本気にしてしまうことがわかる場面です。

「大した用事ではなかったよ。先輩方が卒業された後の話をね」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

それらしい話する達也ですが、これは嘘です。

深雪に心配させないようにもっともらしい話を作り上げたのでした。

場所はまた後夜祭が催されている大ホールへと戻ります。

窓際には真由美と摩利の姿がありました。

「達也くんを政略結婚で十師族へ?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

摩利が驚いた様子で真由美に尋ねます。

「実は一条の次期当主をやっつけた件が師族会議で話題になっていて」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美が十師族の内情を摩利に教えます。

この後夜祭の夜の中庭で、十文字克人が司波達也に話した内容ですがこの『魔法科高校の優等生 第13話〈ゆずれない想い〉』では登場しません。

尺の問題だと想われるのですが割愛されているのです。

このシーンは本編アニメである『魔法科高校の劣等生 第18話〈九校戦編XI〉』に登場します。

その部分を抜粋してご案内します。

真っ暗な西洋庭園。バラが咲き乱れる中庭。先を歩くのは克人です。

「司波、お前は十師族の一員だな?」

引用:魔法科高校の劣等生 第18話

後ろの達也を振り返りもせずに克人が尋ねます。

「……いえ、俺は十師族ではありません」

引用:魔法科高校の劣等生 第18話

一瞬の間の後に達也がきっぱりと宣言します。

もちろん達也は十師族四葉家の一員です。

ですが現当主の甥という本来ならば次期当主候補になっても不思議ではない地位なのですが魔法特性に問題があることで妹の深雪のガーディアンと言う低い地位に据えられています。

ですが十師族であるかと問われれば間違いなくその一員となります。

しかし当主の真夜から達也、そして深雪は四葉家との関係のすべてを内密にすることを厳命されていますので、克人の問いにはこう返答するしかないのです。

「そうか」

そう返事した克人は立ち止まります。しかし振り向くことなくこう告げます。

「ならば師族会議において十文字家代表補佐を務める魔法師として助言する。司波、お前は十師族になるべきだ」

引用:魔法科高校の劣等生 第18話

克人は身体はそのままに振り返りそう告げました。

「そうだな。例えば七草はどうだ?」

引用:魔法科高校の劣等生 第18話

達也は意表を突かれた様子で一瞬引きます。

「どうだと言うのはもしかして、結婚相手にどうだ? と言う意味ですか?」

「そうだ」

「自分は会頭や会長とは違って一介の高校生なので、結婚とか婚約とか、そういう話は、まだ……」

「そうか。だが一条将輝、十師族の次期当主に勝利したことの意味は、お前が考えているよりずっと重い」

引用:魔法科高校の劣等生 第18話

そう発言した克人は達也とのすれ違いざまに肩を叩きます。

「あんまりのんびり構えてはいられないぞ」

そして克人は去って行きました。

残された達也がなにやら考え込んでいると、そこへ深雪がやって来ます。

ここで”魔法科高校の優等生”のシーンと重なるのですが、深雪はゆっくりと歩いてきましたので、血相を変えて走って来る”優等生”とは異なります。

以上が本篇アニメ『魔法科高校の劣等生 第18話〈九校戦編XI〉』の場面となります。

このように達也は克人から十師族かと問われて違うと答えたことと、七草真由美と婚約そして結婚をしろと言われたこと。

このふたつが克人との話の内容となります。

ですが”本篇アニメ”でもこの”優等生”でもその後に深雪には一切伝えなかったということは共通しています。

これは深雪に伝えてしまえば四葉家、十師族、そして真由美を婚約者にという深雪にとっては重すぎるテーマで深く悩んでしまうことから教えるのは時期尚早と判断したのだと思われます。

後夜祭が行われている大ホールに戻ります。

窓際には真由美と摩利がいます。達也を政略結婚で十師族へと言う話題の続きです。

この政略結婚の話ですが情報通の真由美のことなので、克人が達也に話した際に自分の名前が告げられていることをわかっていると思います。

ですがそんな素振りは摩利にはまったく見せません。なので真由美の達也への想いもわかりません。

「……なるほどな。まあ仕方ないさ。宝石を石ころに見せようとしてもいずれはわかってしまうだろう」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

摩利が達也(たち)を宝石に見立てます。

これはわかりやすい上に実に的を射ている例え話です。

「そうね。みんないつか自分の立場や能力に応じて未来を選ばなければならないときが来るわ。

だけど優秀であればあるほど、そのことが本人を縛ってしまうかもしれない。……でもあの子たちなら……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

真由美の言葉が続く間に後夜祭の様子が静止画として描かれます。

他校の男子と踊る一色愛梨は微笑を浮かべています。

光井ほのかは四十九院沓子と踊っています。

背の高さからほのかが男性パート、沓子が女性パートのようです。

しかし沓子は満面の笑みなのに対してほのかは若干引き気味です。おそらく沓子にまた振り回されているようです。

引っ込み思案と思われる北山雫が第三高校の男子生徒からのダンスの誘いを受けています。

雫の戦いぶりは多くの生徒たちに深く記憶されているはずなので、意外とモテモテなのかもしれません。

明智エイミィが滝川和実、里見スバル、春日菜々美を引き連れて会場内を闊歩しています。そうとう賑やかだと思われます。

静かに後夜祭を楽しんでいる雰囲気の一七夜栞と栞を見守るように水尾佐保が笑みを浮かべています。

会場の吹き抜け二階からは会場内を見下ろすように一条将輝と相棒の吉祥寺真紅郎の姿が見えます。

なにやら楽しそうに談笑しているようです。

そして場面はホテルの中庭となります。

ここにいるのはもちろん達也と深雪だけです。

「……最後の曲が始まりましたね」

頬を朱に染めた深雪がその長い黒髪を翻しながらクルリと一回転します。

そして達也を見つめます。

「お兄さま。ラストダンスは私と踊っていただけませんか?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そして片足を後ろに引き、両手でスカートをちょっとだけ持ち上げるカーテシーを披露します。

これは西洋における女性の最高の礼儀作法です。

ですがもちろんここにいる相手は高貴な男性ではなく実の兄ですので、これは深雪の改まってのお願いと少々の茶目っ気が混じった気持ちだと思われます。

そして、わずかに首を傾け微笑を浮かべました。

とても美しい笑みです。

「喜んで」

達也がそれに応えます。

そして二人は誰もいない中庭の噴水の前で踊り始めました。

「九校戦、楽しかったかい?」

「はい。改めて魔法科高校に入学して本当に良かったと心から思いました。素敵な友達。尊敬できる先輩方。

そして競い合える相手。魔法が私とみんなを結んでくれた。

この出会いが共に高みを目指すことの素晴らしさを教えてくれました……」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

深雪の言葉が続く間、画面では再び静止画で後夜祭の様子が描かれています。

メイド服姿の千葉エリカと柴田美月。

明智エイミィと踊る光井ほのか。

緊張のためか気難しい顔になっている十文字克人は七草真由美と踊っています。

ふたりの身長差、体格差を比べると明らかに大人と子供のようです。

北山雫は四十九院沓子と踊っているのですが沓子の踊り方がいかにもアドリブです。

ですが雫はそれを気にもせずに無表情で対応しています。

「……もしも魔法にまだ未知の部分があるとしたら、出会いもまた魔法なのかもしれませんね」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

「そうだな」

達也が応えます。

言葉は短いですが優しさのこもった返事です。

そして深雪はゆっくりと笑みを浮かべました。

「お兄さまと私の出会いも魔法なのでしょうか? ……それとも?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そして場面は変わって第一高校の校舎内、年も明けて2096年1月9日となりました。

多数の生徒が談笑している廊下を深雪とほのか、エイミィ、菜々美、スバル、和実という九校戦一年女子チームが固まって歩いています。

「雫、アメリカで元気にしてるかな? 寂しいよぉ~」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

ほのかが手を組んでボリュームを抑えた声で叫びます。

すると後ろから菜々美がほのか両肩に手を置いて言います。

「まだ言ってる」

「三学期だけの交換留学でしょ。いい加減慣れないと」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

後ろにいる和実がそう告げます。

「よぉ~し、じゃあ電話をかけようっ。あっちは夕方だしっ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

いつも元気いっぱいのエイミィが情報端末を右手に掲げて宣言します。

「それだぁ~」

エイミィのノリにほのかが応じます。

そのときでした。深雪たちの進行方向からこちらに向かってくる一人の女子生徒がいました。

歩き方が堂々としているからか、それともその容姿が気になったのか廊下で談笑している生徒たちが次々と靴音高く歩いて来る女子生徒に注目するのでした。

そして立ち止まります。

「ハロー。1年A組の教室はこっち?」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

呼ばれたことに気がついたエイミィが女子生徒に目をやります。

すると深雪たちも次々と同じように女子生徒を見ます。

「あ、もしかして今日から来た留学生?」

ほのかが尋ねます。

「初めまして、第一高校へようこそ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

そして深雪がほのかの前まで歩を進めました。

そう言った深雪は相手を見てニッコリと笑みを見せるのでした。

この転校生の女子生徒はもちろんリーナです。

正式にはUSNA軍統合参謀本部直属、精鋭魔法師部隊スターズの総隊長で戦略級魔法師でもあるアンジェリーナ・クドウ・シールズ。

リーナは表向きは雫との交換留学生として第一高校に転校してきました。

このことは本篇アニメ2期である『魔法科高校の劣等生 来訪者編』をご覧になればわかると思います。

しかし、本篇アニメの方はあくまでシリアス展開なことから戦闘魔法師としてのリーナの実力はよく描かれていてわかるのですが、リーナの魅力のもうひとつの魅力であるポンコツ美少女が正直あまり描かれていません。

ポンコツ美少女と言えば元祖はほのかですが、それに勝るとも劣らないリーナのポンコツっぷりをこれでもかと表現してくれるのはきっとこの『魔法科高校の優等生』シリーズだと思います。

そのことからもこの『魔法科高校の優等生』のアニメ第2期を待ちたいと大いに思います。

魔法科高校の優等生 第12話の見どころ


●一瞬ですが記憶に残る表情

アニメは絵本や紙芝居と違い動きを重視するものです。

実写ドラマと同じように登場人物たちが動いて話していることで成り立っています。

ですがそんなアニメにも登場人物のすぐさま変化する一瞬の表情に心を奪われることもあります。

今回はそんな一瞬ですが記憶に残る表情をご案内したいと思います。

一七夜栞の祈りのシーン。

その場面は開始から5分57秒の部分です。

《ミラージ・バット》決勝で各校選手たちがサイオン切れで次々と脱落していき試合途中にも関わらず選手が残り3人となったシーンです。

この結果、深雪の入賞は決まり第一高校の総合優勝も決まりました。

深雪との実力差を思い知らされていた最中に、そのこともわかってしまったことで愛梨は心が折れてしまいそうになりました。

しかしそのとき試合には観戦に行けないと言われていた母親の姿を観客席で見つけた愛梨は、

「本当に大切なもののために戦いなさい」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

と母に言われた言葉を思い出し、また応援してくれている沓子や佐保の姿、そして祈るように見上げる栞の姿を見たことで、学校の名誉のため、一色家の誇りのために戦うのではなく、応援してくれる友のため、司波深雪に勝ちたい自分のためにと戦うことになったのです。

そしてそのシーンのひとつが一七夜栞の祈りのシーンです。

両手を胸の前で組み、目を大きく見開いて空を見上げる。

動かず瞬きもしないその姿は勝利を司る神へひたすら祈る無垢で飾り気のない祈念が感じられます。

その純粋で穢れのない乙女の姿は見る者の心を引きつけます。

司波深雪の決意の表情

その場面は開始から9分39秒の部分です。

これも同じく《ミラージ・バット》決勝で第三高校の一色愛梨との一騎打ちの場面です。

第1ピリオドのインターバルが終了し深雪と愛梨が空へと戻ってからとなります。

愛梨が学校の名誉や一色家のためという重荷を捨てて、友たちと深雪に勝ちたい自分のために戦うことを決意しています。

慣れぬ飛行魔法だけでは深雪に勝てないことから得意の跳躍魔法まで行使して、その結果魔力切れでリタイヤしかねないリスクを背負ってでも深雪と全力で戦うことを決めたからです。

ですが格上の深雪だからといってお気楽に試合をしている訳ではありません。

深雪にも友たちが必死で戦ってきたからこそ、繋いでくれたからこそ、ここに自分がいることを理解しています。

そしてこの空で戦えるのは達也が作ったこの飛行魔法があるからです。その達也のためにも〈ゆずれない想い〉があるのです。

「……一色さん。あなたにもゆずれないものがあるなら……。この試合は私だけのものじゃない。

みんなが必死に戦ってきたからこそ、私はこの舞台に立てている。ここまで繋いでくれたみんなの思いに私も応えたい。

そして私にも絶対にゆずれない想いがある!」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

その「ゆずれない想い」を心で言葉にした瞬間に見せる顔が深雪の決意の表情です。

空中に静止してやや俯き目を閉じていた深雪ですが〈ゆずれない想いがある!〉との言葉とともに両目を大きく見開き口を真一文字に引き締めるのです。

これは誤解を恐れずにいえば白衣の妖精には似合わない表情です。

それまで深雪が見せていた微笑はまさに妖精のようでした。気品を持ちならがも愛らしくもあることから花園に舞う妖精に相応しいものでした。

ですがこの場面で見せた深雪のマジ顔は美しくはあるものの穏やかな雰囲気など微塵も感じさせぬ戦いの女神ワルキューレ(ヴァルキュリャ)を彷彿させます。

そしてそんな表情を見せた深雪は全力で一色愛梨との戦いに赴くのでした。

イジラレほのか

もはや『魔法科高校の優等生』の中ではお馴染みとなってしまったのが光井ほのかのイジラレのシーンです。

もともとあわてんぼうでポンコツな性格からからかわれやすい上に、スタイル抜群なことから性的にいじられることが多く、セクハラの被害に遭いやすいのがほのかです。

特に九校戦に入ってからそのイジラレが目立つ印象です。

前回は『魔法科高校の優等生第6話「九校戦、開幕です」』においてでした。

九校戦の懇親会が終わった夜。ほのかはエイミィたちに誘われて第一高校一年女子チーム全員でホテル内の大浴場に行きました。

そこでほのかはエイミィの毒牙にかかってしまいます。

湯につかっているほのかにエイミィが

「剥いていい?」

引用:魔法科高校の優等生 第6話

と襲いかかりその巨乳を揉まれてしまういじられがありました。

ほのかは抵抗するのですがエイミィを振り払うことが出来ず雫に救助を求めるのですが

「大丈夫、ほのかには揉むところがあるから……」

引用:魔法科高校の優等生 第6話

と拒否されてしまい餌食になってしまいました。

そして今回の第13話「ゆずれない想い」では、またもや大浴場にて餌食になってしまいます。

今度の主犯格もやっぱりエイミィなのですが、今回は共犯がいました。それは第三高校の四十九院沓子でした。

沓子はそれまでもほのかをオモチャにしており、いきなりお尻を触ったりとセクハラをしていたのですが、今度はエイミィと意気投合し〈水のエレメンツ〉の力を使って浴槽のお湯を水龍に変え、その牙でほのかの浴衣を奪い取るという作戦でした。

哀れほのかは全裸に剥かれ、タオルで前を隠して水龍を追って浴場内を奔走する羽目になりました。

ほのかはあわてんぼうでポンコツの上に反応がかわいいことでイジラレてしまうのは宿命のようです。

そしてエイミィと沓子は万歳ポーズです。このふたりの悪ノリの周波数はまったく同じなようです。

そして親友の雫はどうしていたかというと一七夜栞と湯につかって沈めた口から泡をブクブクさせているだけでした。

その横にいる栞は同じ無口無表情キャラだからなのか、どうやら雫と意気投合しているようでした。

そんなこんなで今回もまたほのかが性的にイジラレてしまうシーンの登場でした。

このシーンの後は描かれていませんが、エイミィも沓子も謝る展開になると思います。

そしてそれで毎度毎度許してしまうお人好しなのもほのかの魅力です。

魔法科高校の優等生 第13話のネタバレ感想

達也を激怒させることはたったひとつだけ

四葉家に魔法師としては欠陥品として産まれたのが達也です。

そのため母と叔母により手術を受けさせられた結果、魔法を操ることができるようにはなりました。

ですが、それでも生まれたときより持っていた〈分解〉と〈再成〉以外の魔法は思うように扱えません。

そのため第一高校には二科生としてしか入学できませんでした。

そしてまた幼少時に受けた施術の副作用で怒りや悲しみなどの感情の多くを感じられなくなりました。

そんな達也に唯一残された感情は〈兄妹愛〉つまり〈深雪を愛し守ろうとする感情〉のみです。

このことはアニメ『魔法科高校の劣等生 追憶編』に詳しく描かれています。

怒り、悲しみなどに鈍感になっている達也は、他人の生き死に関しても受ける感情は希薄です(親しい友人知人を除く)。

「お前たちが何人殺そうが、何人生かそうが、俺にはどうでもいいことだ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

これは今回の『第13話〈ゆずれない想い〉』で、横浜にある《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》を壊滅させる際に支部長のダグラス・ウォンに告げた言葉ですが、まさに司波達也という人物の死生観を現していると思います。

4月に第一高校に入学した早々に巻き込まれた国際犯罪テロ組織《ブランシュ》の事件、10月に横浜で起きた大亜連合軍の侵攻である《横浜騒乱編》、そして1月に起きる吸血鬼事件《来訪者編》とアニメ化された事件で達也はいずれもCADを手に取り戦うのですが、どれも友人知人に危機が訪れたために反撃した戦闘行為に過ぎません。

それらのことは達也自身に取っては身にかかる火の粉を払う防衛のための戦闘でした。

その理由はただひとつ、深雪個人を攻撃対象にされていなかったからです。

ですがこの『第13話〈ゆずれない想い〉』で、横浜にある《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》を壊滅させた際にはまずジェネレーターを一体ずつ雲散霧消〈ミスト・ディスパージョン〉で消していき、そして幹部もひとりずつ消していき、最後には残ったダグラス・ウォンを消しました。

《ノー・ヘッド・ドラゴン》幹部たちの取引にも応じず、命乞いにも応じず、情け容赦なく完全にこの世から抹消したのです。

このような怒りを持って戦う達也の姿は3年前にもありました。

それは沖縄でのことでした。家族でバカンスに出かけた沖縄に大亜連合軍が上陸侵攻作戦を仕掛けてきました。

その際に達也たち親子が避難した国防軍基地で一部の兵士たちが大亜連合軍侵攻に呼応して反乱を起こし、その中で深雪が小銃で撃たれ瀕死の重傷となってしまいました。

その深雪は達也が〈再成〉を使うことで回復させましたが、深雪を対象として攻撃してきた理由から達也は制裁として上陸してきた大亜連合軍の戦車、装甲車両、そして兵士たちを情け容赦なく消滅させたのです。(アニメ『魔法科高校の劣等生 追憶編』参照)

今回の《ノー・ヘッド・ドラゴン》壊滅に話を戻しますが、彼らは高速道路で事故を装い第一高校の選手たちが乗るバスを襲いました。

また九校戦が始まってからは渡辺摩利をやはり事故を装って怪我をさせ欠場に追い込みました。

そして《モノリス・コード》新人戦では達也を狙って地下水脈に細工をしました。

その次は《ミラージ・バット》で第一高校の小早川景子のCADに細工をして欠場に追い込みました。

かなり多数の妨害工作を行った《ノー・ヘッド・ドラゴン》ですが、小早川景子の件で止めとけば東日本支部が襲われて全員皆殺しという結末で組織壊滅までには至りませんでした。恐らく多分そのまま放置だったはずです。

達也は潔癖正義の人物ではありません。

極端にいえば深雪さえ攻撃対象にならなければ世の悪事には関心がないのです。

「お前たちが何人殺そうが、何人生かそうが、俺にはどうでもいいことだ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

すべてこのひと言に尽きます。

本編アニメである『魔法科高校の劣等生 第6話〈入学編Ⅵ〉』で下記のようなシーンがありました。

国際犯罪テロ組織《ブランシュ》が第一高校内に侵入しミサイルや銃で攻撃してきたシーンです。

この《ブランシュ》の犯行には洗脳された第一高校二年で剣道部の壬生紗耶香も含まれていました。

そのためテロリストたちを全員無力化した後には当然、紗耶香には重い処分が待っています。

紗耶香は二科生として見下される待遇の不満につけ込まれ《ブランシュ》に洗脳されただけであることから、彼女には立ち直る機会を与えて欲しい、他のテロリストたちと同格に扱わないで欲しいとカウンセラーの小野遥から達也は頼まれます。

ですが達也は遙にこう返答します。

これはテロリストたちの主目的である図書室へと向かうときでした。

「甘いですね。……行くぞ、深雪」

引用:魔法科高校の優等生 第6話

言い捨てるように発言した達也は深雪を伴ってその場を去ろうとします。

「おい達也、それはちょっと冷たいんじゃないか?」

引用:魔法科高校の優等生 第6話

レオが強い口調でそう告げます。

熱血で正義感溢れるレオらしいセリフです。

「レオ、余計な情けで怪我をするのは自分だけじゃないんだぞ……」

引用:魔法科高校の優等生 第6話

こう発言した達也は図書室へ向かって走り出しました。

このシーンで判るように達也は圧倒的な戦闘力を持っているからといって誰も彼も助けるようなことはしません。

むしろ危機に瀕している者には誰かに助けられるのを待つのではなく自助努力で解決しろというタイプなのです。

ですが深雪が攻撃対象になった場合はまったく異なります。

「――お前たちは触れてはならないものに手を出した。ただそれだけのことが、お前たちが消え去る理由だ」

引用:魔法科高校の優等生 第13話

達也がダグラス・ウォンに告げた言葉です。

つまりは深雪に手を出すということの意味は「龍の逆鱗に触れる」や「虎の尾を踏む」行為であって、絶対にしてはならない禁忌と言うことです。

「達也」と「みゆき」の名前の考察

アニメにしろ漫画にしろ小説にしろ、主人公やメインヒロインの名前について由来を考えたことは誰でもあることだと思います。

この〈魔法科シリーズ〉では司波達也、司波深雪のふたりがそれぞれ主人公、ヒロインに該当します。

そして「達也」と「深雪」は現代日本ではありふれた名前で世には大勢の達也さん、深雪(美雪、美由紀、みゆき)さんがいます。

そのことから深い意味はなく名付けられた名前であると作者である佐島勤さんからのなんらかの発言でもあればこの件はそれで解決してしまうことです。

ですが調べてみるとやはり〈魔法科シリーズ〉のファンの方々は同じように考えるようで、あれこれ推論めいたものが見つかります。

その中でも有力な説と思えるのが漫画家のあだち充さんの作品に出てくる主人公とヒロインから名付けられたというものです。

あだち充さんは昭和、平成、令和と3つの時代で活躍する青春ラブコメの巨匠です。

そしてその代表作である「タッチ」「みゆき」に出てくるそれぞれの主人公とヒロインが「達也」と「みゆき」でした。

この2作品はほぼ同時期に別の雑誌に連載された漫画でかなりの人気を博したものでした。

一時代を築いた2作の作品の登場人物の名前をそれぞれ〈魔法科シリーズ〉の主役とヒロインに選んだ可能性。

……これをただの偶然だと言い切ってしまうの簡単ですが、それはそれで説得力がありません。

そのことから考えるとこれらの作品が元ネタと言えそうなのですが、問題は年代です。

これらの作品はどちらも1980年代(昭和55年~昭和61年)と言う36年以上前の時代となるのです。

そうなると気になるのが佐島勤さんの年齢です。ご本人のプロフィールには19XX年生まれとなっています。

そして、小説『魔法科高校の劣等生 第1巻 入学編』が発売されたのが2011年となりますがその際に「遅れてきたジュブナイル作家」と記載されています。

それらのことを考慮すると若い頃に小説家としてデビューされたのではなく、大人になって社会人をだいぶ経験されてからのデビューだとわかります。

以上のことすべてを考慮すると、作者は1980年代に中高生で「タッチ」「みゆき」を愛読していたことがあり、自分が書いた小説の主人公とヒロインの名前をそれぞれ好きな作品の主人公とヒロインから選んだ。

あくまで推論の域を出ませんが、これはそれなりに可能性が高い推論かと思います。

まとめ


ここまで「魔法科高校の優等生 第13話 ゆずれない想い」をご紹介して参りました。

ここで今回の内容をまとめたいと思います。

●「第13話 ゆずれない想い」のあらすじ要約です。

長らく続いた九校戦。その最後の試合から今回は始まります。

その競技はもちろん《ミラージ・バット》決勝です。この試合は渡辺摩利の代理として一年生ながら出場した司波深雪と第三高校の一年生である一色愛梨の一年生同士の一騎打ちとなりました。

夜空に光跡を引き縦横無尽に飛び回る深雪を阻止したい愛梨ですが、その深雪との実力差は大きく付け焼き刃の飛行魔法だけでは対抗できません。

そのことで愛梨はスタミナの残量を無視し全力で深雪と戦うべく飛行魔法に得意の跳躍魔法を加え空中に作った足場を蹴り高速にそして鋭角に飛行することで対抗することができました。

深雪はそんな愛梨をライバルと認め、全力で戦うことを決意します。

夜の空に2つの流れ星が時には競り合い時には混じり合って《ミラージ・バット》のホログラム光球を奪い合う名勝負となり観客はその試合に感動を覚えたのでした。

互いに背負うもの、友、家族、学校の名誉。そういう重圧の中、深雪が勝負に勝って優勝するのでした。

そして今年も第一高校が勝ち、三連覇を達成して九校戦は幕を閉じました。

そして夜。司波達也の姿は独立魔装大隊の藤林響子とともに横浜市内にある巨大なビルの屋上にありました。

その目的は《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》の壊滅でした。

達也は第一高校に対して賭の障害となるとしてさまざまな妨害工作をしてきたのが《ノー・ヘッド・ドラゴン》だとは知っていましたが、ここまで大それた仕返しをするつもりはありませんでした。

ですが妨害工作の手が深雪にまで及んだことで達也はキレました。深雪に害をなした代償として達也は情け容赦ない壊滅を実行することに決めたのです。

そして、幹部たちを次々と雲散霧消〈ミスト・ディスパージョン〉でこの世から消滅させ、最後は命乞いをする支部長のダグラス・ウォンを消し《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》を消滅させたのでした。

一方の深雪たち第一高校一年女子チームですが、その時間、ホテル内にある大浴場で入浴を楽しんでいました。

九校戦のすべての試合が終わり開放感あふれる中、のんびりとくつろぐ姿があります。

そこへ突然入ってきた者たちがいました。愛梨、栞、沓子の三高三美娘たちです。

先ほどまで競っていた相手たちなので一高女子チームの面々は気まずい雰囲気になりますが愛梨が深雪の優勝を称えたことで空気は和らいだのでした。

その後、打ち解けた雰囲気の中、深雪は愛梨と、栞は雫と、沓子はほのかと会話が弾みます。

深雪と愛梨が真面目に互いの実力を認め合い再戦を誓う中、悪ノリ大好きなエイミィが沓子を巻き込んで、こういう場面でのお約束のイタズラでほのかが餌食になってしまい裸に剥かれてしまうというシーンもあります。

そして時間が経過しホテル大ホールで九校戦の後夜祭が始まりました。

そこには各校生徒が学校の枠を越えて親睦を深め合っています。そんな中、第三高校の一条将輝が達也と深雪が兄妹ということに今さら気づいて相棒の吉祥寺真紅郎に呆れられるシーンが描かれています。

また貴重な情報として真由美と摩利とあずさの会話で第一高校の一科生と二科生の制服がなぜ異なるかの秘話が明かされる場面もあります。

そして”本編アニメ”にもあった夜の中庭での達也と深雪のダンスシーンですべての九校戦の映像は終わりとなりました。

今回はエンディングの後にCパートがあります。

時間は経過して年が明けて2096年1月9日となります。第一高校の廊下では雫を除く一高女子チームがいます。雫は”本編アニメ”同様に1月からUSNAに留学しています。

そして深雪たちの前に金髪の少女が訪れます。顔は見せません。ですが後ろ姿と声でわかります。

雫との交換留学生として第一高校の1年A組にやってきた少女。もちろんリーナです。

この物語には続編がある、と思わせるニクイ演出です。

 

●魔法科高校の優等生 13話の見どころ

内容は「一瞬ですが記憶に残る表情」と「イジラレほのか」の2つです。

●一瞬ですが記憶に残る表情

アニメは登場人物たちが歩いて走って笑って泣いて、そして怒って、とすべて動画です。そのことから得てして一瞬の表情や仕草を見落としてしまうことがあります。

ですが例えわずかな時間の描写でも描き手が伝えたいと描いたシーンは見る者に強い印象に残します。

一七夜栞の祈りのシーン。

《ミラージ・バット》決勝。愛梨と深雪の一騎打ちとなります。

自分の大切な友を信じて、自分が調整したCADを信じて、栞は両手を胸の前に組み友が戦う夜空を見上げます。その姿はまるで勝利の女神に祈るようです。開始から5分57秒の部分です。

 

司波深雪の決意の表情

《ミラージ・バット》決勝。深雪と愛梨の一騎打ちとなります。

ここまでの試合で自分の大切な友たち先輩たちが戦い繋いでくれたこと、飛行魔法を作った達也のためにも負けられないこと、そのゆずれない想いのために全力で戦うと決意します。

両目を大きく見開き口を真一文字に引き締めたその表情はまるで戦女神のようです。開始から9分39秒の部分です。

 

イジラレほのか

スタイル抜群の美少女、それが光井ほのかです。

ですが実はあわてんぼうでポンコツなざんねん少女でもあります。

そんなほのかですが、事あるごとにイジラレます。

九校戦では主に女湯の浴場を舞台にイジラレました。

前回は『第6話「九校戦、開幕です」』でエイミィに大きな胸を後ろからわしづかみで揉まれるというもので、雫に助けを求めましたが、

「大丈夫、ほのかには揉むところがあるから……」

引用:魔法科高校の優等生 第6話

と、まるで相手にしてもらえませんでした。

そして今回の大浴場ではエイミィと沓子という悪ノリ二人組に酷い目に合わせられます。

あろうことか裸に剥かれて浴衣を取り上げられるというかなりの悪ノリです。

それでも結局後で謝ってくれればそれを許してしまうのがほのかでもあります。

 

「魔法科高校の優等生 第13話《ゆずれない想い》」のネタバレ

内容は「達也を激怒させる理由はたったひとつだけ」と「「達也」と「みゆき」の名前の考察」の2つです。

 

・達也を激怒させる理由はたったひとつだけ

司波達也は歪な魔法師です。

生まれ持ったのは〈分解〉と〈再成〉だけでとても魔法師とは呼べない能力でした。

そのことから四葉家は達也に手術を行い魔法を操れる能力を持たせました。

ですがそれは辛うじての範囲で深雪のように多彩な能力はありません。

そしてその手術の結果、良からぬ副作用が生じました。

それは怒り、悲しみなどの感情の多くを感じ取ることができなくなったのです。

ですが唯一残った感情がありました。

それはなにがあっても妹の深雪を守るという強い兄妹愛です。

そのため他の人間の身に起こった不幸に対しては頓着しないという無関心なところがありますが、これが深雪に対しての悪意、攻撃となった場合は情け容赦なく滅ぼします。

3年前の沖縄では深雪は大亜連合軍に呼応した反乱兵に銃撃されました。

そのため達也は報復として上陸してきた大亜連合軍の戦車、兵士を問わず消去させてしまいました。

そして今回の九校戦でも深雪のCADに細工をしようとした《ノー・ヘッド・ドラゴン東日本支部》の幹部全員をこの世から消滅させて組織を壊滅させてしまいました。

深雪に手を出すということは、イコール、死を意味することとなります。

・「達也」と「みゆき」の名前の考察

達也と深雪。このふたりの名前の元ネタはどれなんだろう?

共にありふれた名前で、日本中どこでも見かける一般的なものです。

ですが、今から36年前に一大ブームとなった同じ作者の2つの物語の主人公とヒロインの名前が”達也”と”みゆき”でした。

昭和の時代に流行した2つの物語。

詳しいプロフィールを一切公開していない〈魔法科シリーズ〉の原作者である佐島勤さんの年齢のヒントとなるわずかな手がかりから”達也”と”深雪”の名前の元ネタが36年前の作品なのかどうか考察してみました。

拙文を最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。

 

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